メンバー別の計画・分担

柴田良弘 教授

 非圧縮性粘性流体の定常解の解析とその初期摂動に関する安定性、不安定性の問題、および混相流を記述するNavier-Stokes 方程式の初期値・境界値問題のwell-posed の問題について研究する。方法論としては、変数係数項を低階にも一般ストークス方程式のスペクトル解析およびストークス作用素に対する最大正則性原理をより深化・発展させることによる。さらに、メゾスコピックな観点からの流体数学研究はまだ研究の途についたばかりであり、大域的変分法と確率過程を基盤とした研究を行う。この研究は本間氏や柳尾氏らとの共同研究という形で研究を進めていく。また流体工学における未解決問題に関連し、境界領域の研究者との共同研究などをオーガナイズし数学の基礎研究および応用研究の相互関係をより密接にし、学内の数学を基盤とする基礎研究を活性化させる。

小澤徹 教授

 低温の液体ヘリウムの超流動層やBose-Einstein凝縮の波動函数の解析について研究する。従来の非線型シュレディンガー方程式に基づく研究を一層発展させると共に、波動函数の流体力学的記述を通し、流体力学的に理解する数学的基礎を研究する。応用解析セミナーの企画運営を通して学内研究者の共同研究を活性化する。

田中和永 教授

 ミクロスコピックな現象とマクロスコピックな現象の関わりを数理的に解明するためには、特異摂動問題の理解が欠かせない。特に量子力学から古典力学への移行過程(semi-classical limit)では重要である。ここでは特異摂動問題の理解を深めるべく、特異摂動パラメタを伴う非線形楕円型方程式系の解析を行う。特にsemi-classical limit の設定の下で非線形シュレディンガー方程式(系)の解析を行い、停常状態と呼ぶべき定在波(standing wave)の存在、プロファイル— 特に凝集現象、凝集店の特徴付けと極限状態の記述—の研究に重点をおく。解析においては変分法を中心に用いる。

山崎昌男 教授

 全平面上の Navier-Stokes 方程式において、外力に対称性を仮定した場合の定常解の一意存在について、対称性をより深く考察し、既存の結果より強い減衰条件をみたすことを示す。ついでこの結果と柴田教授らによる cut-offの手法を併せ用いて、既存の結果が極めて少ない、外力が存在する場合の2次元外部領域における定常解の一意存在を示す。さらに G. P. Galdi らによる、対称性のある場合の Hardy の不等式の改良版を用いて、上の定常解の初期摂動に対する安定性を示す。

本間敬之 教授

 還元剤分子の反応により生じる電子を用いて金属イオンを還元析出させる無電解析出プロセスは,種々の機能薄膜およびマイクロ・ナノ構造体の形成に用いられている.本課題では,Y字型微小流路を有するマイクロリアクターを用い,2つのinletから各々還元剤および金属イオン種を含む電解液を流入させ,両液の接する液液界面における金属ナノ粒子の形成反応について,数学的なモデリングを行う.同時に,このような微小流路内の種々の電気化学反応系について,理論・実験双方から多角的な解析を行う。

柳尾朋洋 専任講師

 分子動力学および非平衡統計力学の手法を用いて、連続体極限におけるマクロな流体現象と、原子・分子スケールのミクロな運動論との間の本質的な橋渡しを行う。特に、流体を構成する分子クラスターのダイナミクスに注目し、その構造変化や相変化の力学的な機構を探求する。さらに、近年工学的応用が注目を集めているナノメートルスケールの気泡の発生、成長、消滅の機構解明にも焦点を合わせる。以上のような分子の「集団運動」の機構解明を通じて、マクロな流体方程式にミクロスコピックな観点からの根拠を与える。

鈴木政尋 助手

 自己重力・斥力作用をもつ流体の運動を記述するモデル方程式に対して初期値境界値問題を研究する。具体的には、ナヴィエストークス方程式やオイラー方程式などの流体力学の基礎方程式と、流体粒子の自己重力・斥力を表すポワソン方程式の連立系で与えられる、(帯電した流体である)プラズマのモデル方程式などを取り扱い、定常解の存在と漸近安定性を解析する。定常解の存在証明では不動点定理などの関数解析的手法を用いる。さらに、スペクトル解析やエネルギー形式を用いた積分量の評価方法などを組み合わせて定常解の安定性を示す。